橘 JJ……重傷患……者に、随分な扱いしてくれる、やん……か。
JJ 黙ってろ。
弾を取り出す際、痛みに耐えきれず橘が動けば、余計な部分を傷つける――
それを避けるためだった。
JJ 始めるぞ。
最初はハサミで、足の腿に受けた弾の周りのズボンを切り取る。
幸運にも、弾丸は浅い位置で止まっているようだった。
これなら取れる……俺は橘の腹の辺りに乗り上げ、足の弾にナイフの焼けた刃を入れた。
最初に傷口を焼いて血を止めておくためだ。
橘 うぐっ……ううっ…うわああっ!
痛みに耐えきれず、橘は叫ぶ。
触れている足は強ばり、しっかり括りつけた筈の身体も揺れた。
JJ この程度で音を上げるな!
橘 びっ……びっくり……した……だけや……。も……平気や……
JJ 今度無様な真似してみろ。弾を摘出する前に息の根を止めてやるからな。
橘 ……ああ、そいつは……さぞ、弾も取り易いやろな……
嘯く橘は、しかしその後はぴくりとも足を動かさなかった。
俺に挑発されたのが余程悔しかったと見える。
刃を通して、橘の震えが手に伝わる――が、それでも俺は強引に傷を切り拡げていく。
その奥に、ようやく食い込んだ弾が見えた。
ナイフを抜き、文字通り2本の指を橘の体内にもぐり込ませると……
間もなく指の先に、固く暴力的な感触を捉えた。 |