イベントスチル

 

 

 

   
霧生

……報酬だ。受け取れ。

   
 

つまらなげに言うと、霧生は中身の詰まった封筒を突き付けた。

受け取った手に、ズシリと確かな重み。倉庫にいた、ものの十数人の命の重みがこれだ。

こういった金で、裏の社会は回っているのだろう……改めて、この街の厳しさを思い知る。

   
 

……とはいえ、即金でこの金額は確かに魅力的だ。

この時勢、こんなに実入りの良い仕事は、殺しか身売りくらいのものだ。

   
J J 報酬は問題ないが、警察の手入れが入る予定の取引なら、今後はお断りだ。
   
霧生 だが、無事終わった。報酬も渡した。何も問題はないだろう?
   
J J ……お前との仕事が、今日限りならな。
   
 

霧生の落ち着きよう、行動の迷いの無さ、そしてあの刑事との会話。

それらから推察するに、やはりあの警察の介入は予め仕組まれていたのだろう。

   
 

だが、この龍宮と呼ばれる湾岸地域内では実際、警察はほぼ機能していない。

基本、警察の介入もなければ、検挙など目にしたこともない。

   
 

ここは、新興勢力のマフィア、ドラゴンヘッドの根回しで買収されており、事実上の無法地帯となっている。

マフィアの方も、それを承知で抗争や取引に及び、湾岸地域は今日の龍宮となったのだ。