瑠夏   さあ諸君、今日はボクの大切な家族――霧生礼司の誕生日パーティーに集まってくれて
      ありがとう。

    マイクを越して聞こえる瑠夏の声に、会場がドッと盛り上がる。

瑠夏   霧生礼司は今日まで我々キングシーザーを支えてくれた男だ。そして勿論これからも、
     ボクのキングシーザーを支えてくれると信じている。
     ――そうだろう、皆!

    雄々、と男達の歓声が上がる。ステージ上でマイクを握る瑠夏も、その声に満足そうな
    表情を浮かべていた。

JJ    (しかし、瑠夏はさすがに壇上に立ち慣れているな……)

     どうでもいいことを思いながら、俺はいつものように壁際でシャンパンを持ち、宴会の
     進行を見守っていた。 壇上には霧生と同じ幹部連中が顔を揃えている。
      キングシーザーの組織の大きさが伝わってくる。

瑠夏   さあ皆、一つ歳を取ってますます男が上がった霧生に、挨拶をしてもらおう! 
     心して聞いてくれ!!
      ほら霧生、皆に挨拶を。

      壇上で、瑠夏からマイクを渡される霧生。心なしか、いつもより表情が硬い。
     ともあれ、見ものであることに違いはない。視線を霧生とその隣にいる瑠夏に集中する。

霧生   ……せん。

JJ    ……?

      霧生の挨拶は聞こえない。マイクからは、ボソボソと何か、かすかなつぶやきが
      漏れてくるだけだ。
     ……そして霧生は、マイクを持ったまま、隣の瑠夏を、まるで縋るような目で見ている。

瑠夏   ほ、ほら、どうしたんだ? 霧生。 皆に挨拶だ。ボクの方じゃなくて、ちゃんと
      正面を向いてだね……

霧生   ……りません。

瑠夏   へっ?

霧生   ……何を言っていいか、分かりません。ボス。

瑠夏   ……。

JJ    ……。


 

 
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